「仮放免」とは?
仮放免(かりほうめん)とは、日本の入管法に基づき、収容施設に入っている、もしくは入る人が一時的にその施設から出ることができる制度です。その人が健康問題や人道的配慮、送還の技術的困難などを理由に適用されます。仮放免は場合によっては数年・週十年単位の長期間に及ぶ場合もあり、日本で子どもができる場合もあります。仮放免中は一定の制約が課され、生活や基本的な権利を本質的に保障する制度ではありません。例えば1.定期的な出頭を義務けられたり、2.住民登録ができず、住民票が作れず、公的な保険や保証から排除されたり、3.就労が禁止されたりします。
仮放免者は生活基盤の確保が困難な状況に置かれます。就労が許可されない場合、生活費を稼ぐ手段が限られ、多くはNPOやボランティアによる支援に頼っています。しかし、これらの支援は十分とは言えず、健康や精神面での負担も大きいです。また、仮放免は一時的な措置に過ぎず、いつ退去強制が執行されるかわからないという不安定な状況が、さらなる精神的ストレスをもたらします。特に深刻なのは、仮放免中や在留資格を持たない親のもとで育つ子どもたちの問題です。
子どもたちへの影響
在留資格を持たない子どもたちの多くは、日本で生まれた、もしくは育った場合が多いです。日本の小・中学校を卒業した子も少なくありません。しかし、一般的な日本人と異なり、精神的にも物理的にも問題を抱えています。例えば、親が入管の施設に急に収容され、トラウマを持っている子どもや、また、周囲がその事実を部分的に知り、「犯罪者の子ども」のように認識されてしまったりします。また、県外への移動が制限されていたり、両親、及び本人の就労のが禁止されているため、一般的な子どもと比較し、社会的機会や経験が少なくなっています。そのため、自分で何かを行った経験が少なく、自己有能感・自己肯定感を維持・増加させることが難しくなっています。
また、日本で生まれ育った子どもたちは、両親より、日本語能力が高いため、親戚の仲での通訳を任され、学校を休んだり、勉強する時間を確保できない場合があります。加えて、両親が就労できないため、経済的に厳しい場合が多く、修学旅行や部活動など一般的な経験ができない場合があります。
以上の状況から、中学生、高校生は、経験が少なく、自分にできることや適性を判断できず、親戚がなったことがある限られた職業を選択する。及び、何かを自分でやった経験が少ないため、具体的な手順を考えられない。また、制度上の制限から、自分の将来を諦め、将来を考えようとしない。といった将来の進路に関する問題があります。将来について考え、進学をしようとしてもさらに、高校・大学では在留資格の問題が顕在化します。
若者の進路と将来の課題
高校や大学への進学を目指す子どもたちは、在留資格の壁に直面することが多くあります。例えば、公立高校の授業料無償化の対象からは排除されています。また、仮放免を理由に大学や専門学校に入学を断られるケースもあります。さらに、入学ができても、住民票がないため、奨学金の申請条件を満たせなかったり、自身も両親もアルバイト・就労ができなかったりするため、経済的に厳しい現状があります。そのため、進路選択の幅が大きく制限され、学びたい夢を諦めざるを得ない、将来について考えることを放棄する若者もいます。
さらに、高校生以上の若者は、自ら入管に行かなければならず、在留資格をもらうことの難しさを実感し、社会の中で自分が「日本の一員」として認められていないことを強く意識するようになります。日本語を話し、日本で教育を受けてきたにもかかわらず、法的な理由で社会的な活動が制限されることで、アイデンティティがの確立や保持が難しくなっています。